編集長のズボラ料理(676) カニかまのホタテ味
海の最大の魅力は泳ぐことではなく、サザエのつぼ焼きだろう。においが流れてくると、足は自動的に店の方に動き出す。
店に行って迷う。買おうかなあ、諦めようかなあ。高いからである。でも、においには勝てず、買ってしまう。
1つ食べ終わって、また迷う。2つ目を食べるかどうか。高いから、最終的には断念する。
貝はおいしいが、結構値段が張るものが多く、食べるのをセーブして物足りなさが残る。バクバク食べられるのは、居酒屋さんのアサリの酒蒸しと、カキ小屋の焼きカキくらいのものだ。
同じカキでも、オイスターバーとなると、そうはいかない。第一、カキ小屋とオイスターバーでは、言葉の響きが違う。次に、店の構えが違う。小屋は壁がなく光と海風が存分に入る掘っ立て建物だが、バーは照明を少し落とし、外部と遮断した別世界である。
さらに、小屋の人は長靴をはいているが、バーの人はスーツに身を包んでいる。カキを入れる容器は、小屋のバケツに対して、バーはおしゃれな皿である。だから、バーでは、ガバガバ食べにくい。それは懐具合ともマッチはするが、物足りなさは残る。
その昔、大阪市・梅田の店「貝作」に何度か行った。いろいろな貝を焼いて食べるが、この店には趣向があった。貝を食べたあと、貝殻に残った貝汁を、大きな二枚貝の貝殻の片方に集めていく。火にかけているから、厚い貝汁が増えていく。、そこに短く切ったニラを入れて食べる。これは、貝だけの物足りなさを補ううまいアイデアだと感心した。
スーパーでホタテ貝を殻ごと売っていた。しかも1つ120円ほどで安い。そこで、1人2つずつ買った。殻の上のホタテにバターを乗せ、オーブンで焼いた。最後にしょうゆを垂らし、皿に乗せて食べた。
2個では物足りない。その時、貝作のアイデアを思い出した。冷蔵庫にカニかまぼこがあったので、それを使った。殻に残っていたホタテのスープ、バター、しょうゆの味で食べてみた。
最近、アサリ以外にガバガバ食べられる貝を、スーパーで見つけた。冷凍のムール貝。フランスではよく食べるらしいが、フランスに行ったことのない僕は、サイゼリアでしか食べたことはなかった。スーパーのムール貝は安いという意外性がある。日本名がイガイだからだろうか。(梶川伸)2023.07.26
更新日時 2023/07/26