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編集長のズボラ料理(636) アップルパイ

試作品1

 失敗は成功の母。そうは言うが、僕の場合、なかなかそうはならない。アップルパイで、つくずくそう思った。
 秋になると、長野と青森のリンゴが届く。そこで考えた。アップルパイを作ってみようか。ただし、何の知識もない。でも。何とかなるだろう。リンゴを煮て、パイ生地に包んで、オーブンで焼けばいいだけだ。ズボラ料理の心髄ではあるが、無知とは恐ろしい。
 さっそく、スーパーにパイ生地を買いに行った。ところが、どこに売っているかさえ分からない。店員さんに聞いて、冷凍食品コーナーだと知った。そうだったのかあ。
 家でパックを開くと、長方形だった。アップルパイは円形でなければならないのに、どうするんや。説明を読むと、2枚をつなげるらしい。何だ、そうだったのかあ。
 生地を丸い容器にはめ込み、煮たリンゴを載せた。容器からはみ出した生地を細長く切ってひも状にし、リンゴの上に十字に網をかけて焼いた。でき上ったものを見ると、どうも泥臭い感じがする。パイとにらめっこをして、気づいた。ひもの交差が十字だから雰囲気が出ないのだ。
 修正点は判明した。失敗は成功の母。2日に分けて食べ終わると、第2作に挑戦した。今度は交差角を90度ではなく、30度にした。でき上ると満足見があった。これだ、これだ、この角度だ。喜びにひたっていると、別の修正点が見つかってしまった。リンゴの下の生地のサクサク感がなく、ネチョッとしているではにか。これでは、パイらしさがない。。
 食べながら考えて、第3作に挑んだ。容器に生地をはめ込み、リンゴを乗せる前に1回、オーブンで焼いておけばいいのだ、簡単なことだと思ったのだが、焼いてみて、生地が縮むのを知った。
 第4作で大きめに生地を容器にはめ込んだ。それは成功したのだが、新たな修正点発生。飾りのひもに照りつけようと思って卵の黄身塗り、真っ黒になった。
 第5作では焼き時間を修正した。さらに欲張って、シナモンの粉を入れてリンゴを煮たが、それほど効果がないので、第6作では煮てからシナモンの粉を振った。
 もう少しコクがほしいという修正点が見つかり、第6作では、リンゴの上にバターを少し乗せて焼いた。ホンマモンのアップルパイにほど遠いが、もう飽けてきて、不完全作を食べる気力が失せてしまった。。
 これだけ失敗が続くと、母はどこにいるのだろうかと思う。そうだ、料理本でもインターネットでもいいから、調べて作ればよかったのだ。母はその中にいたに違いない。(梶川伸)2022.11.30。、

更新日時 2022/12/02


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