このエントリーをはてなブックマークに追加

編集長のズボラ料理(619) ツナとシメジの卵焼き

卵焼きはトロトロ状態がいい

 キノコは値段が案外安い。マツタケなど一部を除けばの話だが。
 安いからよく買う。ところが、料理の種類はあまり多くないように思う。エノキダケなど、鍋物の具材の一部として煮るか、何か一緒に炒めるか、パッと頭に浮かぶのは、そのくらいのもんだ。
 ところが、エノキの生産者を取り上げたテレビ番組を見て、感心することしきりだった。スーパーで売っているエノキはどれも同じで、石づきの部分でまとまっていて長さは20センチ足らずのものばかりだと思い込んでいた。
 この生産者は違う。直径の太い瓶で育てて太い束にしたり、とてつもなく長く育てたりと、いろいろな新製品を出していた。エノキ自身に変わりはなく、言ってみれが形状の違いだけだが、これが新しい料理の発想を生む。
 居酒屋チェーン・塚田農場とのコラボで、月見えのきステーキなるものを発案したらしい。石づきに近い固まった部分を輪切りにして、それをステーキのように焼く。エノキ自体が主役なのである。卵の黄身を乗せているので「月見」となり、そのネーミングもいい。その発想に驚いた。
 番組を見て、時々飲みに行く奈良市の和ダイニング「拓」を思い出した。大将がアイデアを凝らす。おちょこ1杯100円というのがその代表で、これだと1000円で10種類の日本酒が飲める。
 無料の突き出しにも趣向がある。1番ビックリしたのは、1人用のセリ鍋だった。鍋がつきだしということ自体が想定外。小鍋にセリだけが入っている。根も一緒に食べる。東北ではそうするとは聞いていたが、実際に出てくると、「ヘェ~」と思う。エノキの石づきに近い部分を使うことに通じる。
 せっかくだから、セリ以外も鍋に入れようと思う。そこで、魚やシイタケ、生ワカメを頼んでしまった。今度は単品ごとにお金がいる。そういう店の作戦なのだった。試合開始早々、突き出しで店側の勝利といったところだ。
 今回はシメジを使う。スーパーでは、シメジの安さはわかりやすい。2パックがセットになって安売りをすることがあるからだ。そんな時につい買ってしまう。今回も。
 シメジは石づきをを切って、1本ずつにほぐす。フライパンを熱し、缶詰めのツナを油ごと入れ、シメジも加えて炒める。味つけはしょうゆ。卵を好みの個数をボールに割って溶き、フライパンに注いで、ツナとシメを具にしたオムレツ状にする。皿に細切りにしたレタスを敷き詰め、その上に乗せて完成。
 結局、新しい発想の料理ば思いつかなかった。そこで、レタスを使うことでお茶を濁してしまった。発想の訓練のために、おちょこ1杯100円の店に通わなければ。(梶川伸)2022.09.05

更新日時 2022/09/05


関連リンク