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編集長のズボラ料理(615) 豚バラ肉と大根のオイスター炒め

大根の好みの歯ごたえを考えて、だしの量を調整

 豚バラ。豚のバラ肉のことだが、9割の人は「ぶたバラ」と略して言う。それだけ親しみがあり、しかも安心感がある。
 親しみを感じるのは、脂身が多い文安いからだろう。安心感もそこから來る。
 牛バラと言う人は3割程度ではないか。根底には、牛肉は豚肉より値段が高いので、おそれ多さがある。だから略さずに、「ぎゅうのバラ肉」と敬意を払って言う人が多い。略したとしても「ぎゅうバラ」。「ぶたバラ」と同じように「うしバラ」でいいではないかと思うのだが、牛にはそれを許さない威厳がある。
 豚バラは安いだけではない。うまみもある。奈良県民がこよなく愛する精肉店「福寿館」で、シャブシャブ用に豚肉を買うことがある。ロースとバラの2種類を混ぜるのだが、バラの方を多く買う。日によってバラバラではなく、いつもである。脂身にうま味があるからだ。
 でも、何でバラというのだろう。薔薇(ばら)に結びつけば、上品ないいイメージだが、豚バラにはそんなイメージを感じない。同じ「バラ」という音だが、豚の方にはどろ臭さがある。
 インターネットで調べてみると、この肉はあばら骨の近くの部位をさすらしい。だから、あばら肉だが、それがバラ肉と変化したのだという。やはり、薔薇とは無関係だった。ところが……。
 神戸市・三宮の居酒屋さん「青森ねぶた小屋」に、遊び仲間で行ったことがある。青森の食べ物をたくさん置いていた。メニューの中で気になった十和田バラ焼きを頼んだ。
 豚バラを使っているのだろうと推測したが、注文する時に店に人にどんな食べ物かを聞いてみた。豚バラとタマネギを甘めのソースで炒める十和田地方の名物料理だった。だからバラ焼き。「やっぱり」と思ったとたん、続きがあった。
 バラ焼きで町おこしを始めたグループが、「ベルサイユのバラ」をイメージした衣装でPRしたことから、この「バラ」ももじっているそうだ。何と薔薇と関係があったのだ、運ばれてきた料理とギャップはあるが、何と美しいネーミング。
 薄切りの豚バラを食べやすい長さに切る。大根を薄い短冊に切る。鍋にだしをとり、砂糖、酒、しょうゆを加えて煮立てる。フライパンに油をひき、豚バラと大根を炒める。火が通ったら、鍋のだしを注ぐ。量はヒタヒタ程度。炒め煮にして水分がなくなったら、オイスターソースを加え、サッと混ぜる。
 でも、何でベルバラの衣装だったのだろう。バランスが悪いような気がするが。(梶川伸)2022.08.10


更新日時 2022/08/10


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