編集長のズボラ料理(576) 豚肉と広島菜のマヨネーズ炒め
らーめんを食べ歩いた時期があった。
印象に残っているのは、大阪市・西梅田の毎日新聞本社から歩いて行けた市丸という店だった。丼に麺(めん)を入れ、スープを張る。真ん中に丸い空間を取り、その外側に、3、4センチの長さに切った細ネギを放射線状に並べ、丼の周囲を埋める。真ん中の空間には、煮豚、モヤシが盛ってあった。緑の放射状の帯が、美しいラーメンだった。今はもうない。
得だと思うラーメンもある。カラシ高菜が用意されている店だ。それを自由にラーメンに入れる。高菜が大きな丼に入っている店があり、この場合は席をいったん立って、取りに行かなかければならない。
1回目は当然の権利だと思うから、ためらいはない。ただ、お代わりを取りに行くのは勇気がいる。カウンターの中で店員さんが下を向いてラーメンの用意しているすきを狙い、素早く行動する。もし、顔を上げれば、「結構ずうずうしいな」といった目で見られる違いないからだ。
実は、そんな体験がある。淡路島の牧場に遊びに行った時だった。牛乳の試飲があったので並んだ。コップ半分ほどの量だったから物足りない。そこで、もう1回並んでしまった。その時に、例の目を見た。もう、そんな目は見たくはない。
明太子の「やまや」の食堂に行くと、明太子とからし高菜が食べ放題と銘打っていた。食べ終わればお代わりを頼む方式で、勇気がいりそうだが、周りが次々と頼むから、こちらも負けてはいられないので、迷う余裕がない。ただ、明太子中心だがら、高菜はやや影が薄かった。
高菜は人気者だ。うちの冷蔵庫には、いつも漬け物が入っている。高菜チャーハンは和風焼き飯の代表格で、僕も冷蔵庫の高菜漬けで時々作る。
和歌山では目はりずしでもおなじみだ。子どもが小さいころには串本町の橋杭海水浴場に行き、すし屋さん寄って、昼ご飯の目はりずしを作ってもらっていた。もうからない客である。
それほど深い関係の高菜だが、年末になると、冷蔵庫の勢力図が変わる。広島のいとこが、広島菜の漬け物をたくさん送ってくれる。高菜は隅に追いやられ、存在感を失う。
今回は高菜でもいいが、うちの冬の主役の漬け物、広島菜を使った。広島菜は食べやすい大きさに切る。豚肉の切り落としを用意する。フライパンにマヨネーズを入れ、それを油代わりにして、2つを炒める。味つけはコショウ。
高菜は常備してある。野沢菜の漬け物も食べたくなって買った。その直後に、いとこから例のお歳暮が届いたことがある。日本三大漬け菜の祭典が、冷蔵庫の中で繰り広りられることになった。漬け菜の長い冬だった。(梶川伸)2022.01.24
更新日時 2022/01/24