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編集長のズボラ料理(527) 鶏のマスタード焼きビワジャムソース

ビワでなくても、フルーツ系のソースでもいい

 僕はアパートの1階に住んでいる。裏は小さな庭になっている。
 これは都合がいい。ちょっとした花を育てている。地植えと20ほどの鉢で。
広いと手入れが大変だが、狭いのであまり苦にならない。
 朝起きると、まず花がらを摘む。次に水やり。庭にある蛇口にホースをつないであり、シャワーモードにして水をまく。これが難しい。
 もともと蛇口への取り付け部分が緩かったのか、長い間に緩くなったのか、水をまいている最中に、その取り付け部分が時々外れてしまう。さあ大変。蛇口は地面にあるため、口は斜め上を向いていて、水は放物線を描いてお隣さんの庭に飛んでいく。
 あわてて蛇口を回して、水を止める。その間5秒。ある時、お隣さんが洗濯物を干し終わった時に、水が飛んだ。仕方ない。水の放物線に体をさらしたまま、蛇口を回した。お隣の洗濯物はほんの少し水すぶきが散った。大声でお隣さんを部屋から呼び出して謝った。僕の服はビショビショ。お隣さんの洗濯物はなんとか守ったが、うちの洗濯物は増えてしまった。
 ある時、僕が留守の間に、同じことが起きた。家族が盾になって放物線を止めたが、取り付け口の調子が悪く、蛇口を回すのを邪魔していた。家族は大声でお隣さんを部屋から呼び出した。表の玄関に走ってもらい、開き扉の中にある水道の元栓を切ってもらった。お隣の洗濯物は難を免れたが、元栓をきるまでに2分ほどかかり、家族は全身ビショビショ。うちの洗濯物は大量に増えた。そんなご近所付き合いを続けている。
 庭の外は道路から高さ3メートルほどの、垂直に近い斜面になっている。そこに植栽があり、お隣さんの庭の外にはビワの木が立っている。先日、お隣さんがビワの実をたくさん採って、手渡してくれた。お礼を言うと、「うちのじゃないから」。庭の外なので、確かにそうである。
 食べてみた。「酸っぱい」。お隣さんに言わせると、「実家は徳島県の田舎で、ビワの木もあった。兄弟は多く、甘くなるまで待っていたら、ほかの兄弟に食べられてしまう」。僕の感じた酸っぱさは、お隣さんにとっては、普通なのだった。
 またビワをもらった。「今度は甘いから」と。でも酸っぱい。そこでビワの皮をむき、種を取って、砂糖をたっぷり加え、白ワインで煮て、最後にレモンを落としてジャムを作った。これなら酸っぱくない。
 鶏肉のぶつ切りに塩、コショウを振り、マスタード、しょうゆで和え、ビニール袋に入れてよくもみ込み、しばらく置く。フライパンに少しだけサラダ油をひき、鶏肉は皮の方からよく焼き、ひっくり返して焼く。分厚ければ、ふたをして蒸し焼きにし、火を中までと通した後、ふたを取って両面を再度軽く焼く。皿に盛って、ビワジャムを乗せる。
 花の水やりにはきを使う。水量を多くせず、ソロリソロリとまく。それなら、取り換えればいいじゃないか。大噴出は時々なので、ついつい買いそびれている。水が飛んでも、体を張る技の習熟度は上がっているし。(梶川伸)2021.07.23
 
 

更新日時 2021/07/23


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