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編集長のズボラ料理(526) ウナギ3点セット

ウナギ3点セット

 ウナギはかば焼きにつきる。ここ十数年はウナギの値段が高騰しているので、あまり口にしないが、食べるのならかば焼きとなる。
 大阪市の竹葉亭に、3人で行ったことがある。せっかくだから、別々のものを注文しようとなった。かば焼き定食、うな丼、ひつまぶし。結局はかば焼きのバリエーションだった。
 白焼きだってあるのだが、だれも決して頼まない。かば焼きを食べるのに、全く迷いはなかった。
 「早い・安い・旨い」と書いてある大阪市の「宇奈とと」は、安いので行きやすい。そこでの迷いといえば、うな重にするか、うな丼ダブルにするかだけ。かば焼きは確定事項なので、860円か1000円か、その差は140円の選択だけで、誤差の範囲と言える。
 娘夫婦が奈良市のウナギの店「豊川」に連れて行ってくれた。うな重を食べたが、薄づくりも頼んでくれていた。表面は軽くあぶってあるが、中は生。白くて透き通ったような身で、はらわたの赤い部分との組み合わせが、なまめかしい。
 それでも思った。見るのは薄づくり、食べるのはかば焼きと。
 スーパーでウナギは、かば焼きしか売っていない。白焼きは見たことがない。薄作りなど、もってのほかである。
 薄づくりに比べれば、きれいな色ではない。それでもかば焼きが確固たる地位を占めているのは、色ではなくにおいではないか。
 ウナギのかば焼きは「においだけで、ご飯が食べられる」という、聞き飽きたギャグがある。長い人生で、500回は聞いたのではないか。ステーキでも言わないし、エスカルゴやフカヒレスープでも言わない。ウナギの力の源は、においなのだ。
 淡路島を歩いていて、においに抵抗できず、店の前で売っているアナゴを買ってしまったことがある。これもたれのつけ焼きだった。また少し歩いて、サザエのつぼ焼きで足が止まり、手は動き、口も動いてしまった。しょうゆ・酒・みりんといったたれで焼けば、ウナギデモ7アナゴでも、何でもいいのだ。
 回転ずし「ととぎん」でウナギのにぎり3貫のセットを頼んだ。当然3つともかば焼きだった。ところが、2つはヤマイモとチーズを乗せたアレンジメニュー。そうか、この手があったのだ。かば焼きも目先を変えることができる。
 ウナギのかば焼きを買ってくる。1尾そのままなら、適当にカットし、皿に乗せて酒を振り、ラップをかけて、電子レンジでチーン。取り出して、1つはサンショウを振る。2つ目はバターの薄切りを乗せる。3つ目はとろけるチーズを乗せて、オーブンで少し焼いて溶かす。これで3点セット。
 ヤマイモを使わなかったのは、ととぎんの完全コピーではあまりにも恥ずかしいからだ。バターにしたのは、大阪市・心斎橋のすし屋さんで、ウナギバターの握りがあると聞いていたからだ。結局は真似しである。(梶川伸)2021.07.21

更新日時 2021/07/21


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