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編集長のズボラ料理(509) 豆腐のレモンソテー

レモンは酸味をきかせた方がいい

 その昔、ポッカレモンは万能選手だった。思い浮かべるだけでもつばが出るほど酸っぱいのだが、ごく少量で効き目があるのが利点だった。
 紅茶にも垂らした。もちろん、レモンの輪切りの方がいいに決まっている。ただ、レモンには難点がある。どうやって絞って果汁を絞り出すか。これが難しい。
 おしゃれな店などでは、レモンの輪切りはスプーンに乗って運ばれてくる。手に取って、カップの紅茶の上で絞ればいいのだが、おしゃれさに欠ける。
 そこで、スプーンに乗せたまま紅茶の中に入れる。レモンをカップの内側に張りつけるようにし、スプーンの腹で押すことになる。ところが、ほとんど果汁が出ない。さらに力を入れる。そのとたん、紅茶のしずくが飛び出す。それどころか、カップが倒れて、紅茶が全滅する恐れさえある。
 よしんな成功したとしても、その後はどうするか。カップに入れたままだと、飲む時に口元に寄ってくる。これを舌でブロックしながら飲むには、それなりの訓練がいる。
 スプーンですくって皿の上の戻すとする。紅茶がついてきて、皿が汚れてしまう。絞った後だから紅茶をたくさん吸い込んでいるうえ、スプーンで紅茶もすくってくるので、皿は洪水状態になる。おしゃれな店にはふさわしくない。
 その点、ポッカレモンは容器を押して出すだけだから、苦労はない。レモネードのようなしゃれた飲み物も、ポッカで代用できた。店で飲むレモンチューハイも、当初はポッカを使っていることがあった。
 一方、本物のレモンといえば、サンキストだった。アメリカ・カリフォルニア産のレモンで、レモンとサンキストは同義語に近かった。
 最近は瀬戸内海のレモンの人気が上がってきた。特に広島県・生口島(いくちじま)のレモンは瀬戸田のレモンと呼ばれ、ブランドになってきた。
 これはあまり手に入らない。そこで、「瀬戸内レモン味イカ天」に走る。さらに「瀬戸内のレモン香るごぼうチップス」「ひろしま檸の香(れのか)」に手を伸ばし、タカギベーカリーの「瀬戸内レモンケーキ」に行きつく。これが国産レモンを意識した人のたどる道となる。
 豆腐を水切りし、短冊型に切り、塩・コショウををする。小麦粉にコーンスターチを少し混ぜ、豆腐にまぶす。オリーブオイルにレモンを多めに絞り、よくかき混ぜる。豆腐をこれにくぐらせ、油をひかないフライパンでソテーする。最後にしょうゆを垂らして、両面を再度焼く。皿に乗せて、粉末のパセリを振りかける。
 瀬戸内レモンケーキに行きついた流れには、まだ先があった。それはレモスコ。「広島レモンの果汁と、唐辛子、酢、海人の藻塩を絶妙なバランスでブレンドした新感覚辛味調味料」だそうだ。(梶川伸)2021.05.28

更新日時 2021/05/28


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