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編集長のズボラ料理(383) ジャガイモと鶏ササミの炒め揚げ

ジャガイモと鶏ササミの炒め揚げ

 ズボラ料理は誇れるものは少ないが、欠点は多いと自信を持っている。
 欠点の1つは、レシピがいい加減なことだろう。適当に切るだとか、適当に入れるだとか、「適当」が多い。あいまいな味覚なので、この長さや大きさがいいだとか、この分量が最適だとか、それがわからないから、「大体」でごまかしている。
 この「大体」という言葉は、僕の行動基準でもある。それはファジー理論に基づく。ただ1冊だけ読んだファジー理論の本のせいだ。本に次のようなくだりがあった。例を大阪港に取って、書き直してみる。
 大阪港から神戸港まで40キロある。ところが大阪港から尼崎港まで40キロと言っても正解である。海岸線を細かくたどっていけば、そうもなりうる。大阪港の起点からすぐそこに見えている地点まで、40キロと言っても正解である。海岸の砂や石の1つずつの海側を細かく計っていけば、そうもなりうる。
 唯一の正しい答なんてないから、大体でいい。そういう信念で、大体で生きている。
 遍路の先達でもそうだ。札所にお参りをして、バスに乗る。すると添乗員さんが人数を数えるが、僕は言う。「大体でいいよ。1人、2人の過不足は誤差の範囲だから」。1度、トイレに行った人を誤差の範囲に入れて、バスをいったんスタートさせたことはあった。添乗員さんはあせっていた。
 ズボラの欠点のもう1つは、居酒屋メニューが多いことだ。料亭やレストランにはとんと縁がないから、そうなるのも仕方がない。今回の「ジャガイモと鶏ササミの炒め揚げ」は、居酒屋さんで食べたものではないが、ビールのつまみのようなもので、どうしても思考が居酒屋的ななってしまう。
 いくつか書いたが、ズボラ料理の最大の欠点は、料理の基礎を知らないことだ。だから、料理が得意な人の言うことは、何でも「なるほど」と思う。「揚げ物の際、油は少ない量で」と言われて、すぐさま採用した。今回もそうだ。
 鶏のササミは細長く切る。ジャガイモも皮もむいて、細長く切る。両方とも軽く小麦粉をまぶす。フライパンに油を入れる。量はジャガイモの厚みの半分くらいの深さにする。ジャガイモ、ササミを炒めるようにしてじっくり揚げ、表面に焦げ目がつくくらいにする。
 皿に盛り、クレイジーソルト(なければ塩とオショウ)、粉チーズをふる。ビールを飲みながらつまむ。ズボラの神髄と言える。(梶川伸)2019.11.26

更新日時 2019/11/26


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