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編集長のズボラ料理(357) ワサビしょうゆ豆腐の生ハム巻き

木綿豆腐の方が使いやすい

 食べ物の、ちょっとしたことにこだわる人がいる。それがグルメたるゆえんだろうが、グルメではない僕にとってみると、ちょっと面倒くさい。。
 遍路仲間のある女性のこだわりは、実に細かい。「そうめんは好きだけど、うどんは嫌い」と宣言した。香川県多度津町の77番・道隆寺の門前のうどん屋さん「香の香」に、昼食で入った時のことだった。
 うどんとそうめんの原料は、どちらも小麦粉。だから僕は言う。「何でやねん、太さが違うだけやんか」。さらに理論的に攻める。「小豆島では直径1.2ミリまでがそうめん、その上が冷や麦、2ミリ以上がうどんやで」
 しかし、敵はひるまない。「太さが大事」。図太い仲間である。その店ではセットになっていた炊き込みご飯ばかり食べ、「うどんは5本だけ食べた」と嫌みを言う。そこで反撃した。「うどん5本なら、そうめんを半束食べたの同じや」。嫌みだったが、大げさすぎた。「そこまでではない」と、カウンターがきた。
 「冷や奴は食べるけど、湯豆腐は食べない」という、これまたやっかいな遍路仲間がいる。冷たい女である。「何でやねん。温度の違いやないか」
 大阪の「はり重」の高級牛肉なら、話はわかる。すき焼きか、コールドビーフ(ローストビーフをはり重ではこう呼ぶ)と聞かれれば、間髪を入れずコールドビーフと答える。
 理由は簡単だ。はり重の店でカレーライスは食べたことはあるが、すき焼など手が出ない。その点、コールドビーフはお中元、お歳暮でもらったことがある。だから、理由に筋が通っている。
 豆腐は筋が通らない。湯豆腐がさめたら食べるのか。冷や奴が室温になったら、食べないのか。温度の線引きがあやしすぎる。
 そこで、反撃の意味も込めて、豆腐を使う。豆腐は水切りをして、太めの短冊に切り、ワサビしょうゆに漬つけておく。フライパンにオリーブオイルをひき、豆腐の長い方の4面を焼く。それに生ハムを巻く。
 これを冷蔵庫で冷やしたらどうだろう。冷や奴の変形と思えば、湯豆腐嫌いも食べるのではないか。(梶川伸)2019.06.28

 

更新日時 2019/06/28


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