心にしみる一言(131) 脳のどこかに、コンタクトを求めようとする機能が残っている。それを探り当てるようアプローチすることが大事だ
◇一言
脳のどこかに、コンタクトを求めようとする機能が残っている。それを探り当てるようアプローチすることが大事だ
◇本文
若者が交通事故に遭い、寝たきりや植物状態といった重い後遺症に見舞われた時、回復への道は容易ではない。脳外科医の山口健一郎は「反応が出てくるのは、事故や発症から半年ぐらいまでのことが多い」と話し、上記の言葉が続いた。
そのうえで、言った言葉がある。「その機能を探り当てるようアプローチすることが大事だ。声かけであったり、スープを与えることであったり、ふろに入れてみることであったりするが、いかにあきらめずに続けるかだ」
回復した具体例を聞いた。交通事故で意識不明になった女性患者のケースでは、半年後に言葉が出たという。きっかけは、飼っていた犬を母親が患者のひざに乗せたことだった。かすかに目を開けた。間もなく、栄養をとるために口に入れていたチューブを、ピチャピチャとリズミカルなめるようになり、やがて言葉が出るようになった。
愛犬が大きな役割をしたこともあった。八カ月たって目が天井を見始めた。母親が動くと、その動きを追うようになった。本人が名づけた愛犬「ジョイナー」の話をすると、言葉としては聞こえなかったが、「うん」とうなずいた。そのことがきっかけになり、言葉が戻った。山口さんは言った。「技術があるわけではない。発想法の違いがあるだけだ」(梶川伸)2017.10.20
更新日時 2017/10/20