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まちなみ探訪③ 末広町の「新屋敷住宅」

数寄屋門は数寄屋造りのように自由な造りの冠門で、住まう方の趣向を反映した、門にふさわしい表情を見せ

 豊中市末広町1丁目から3丁目にかけて、古い屋敷が残っている。10年前に訪ねた時は朽ちかけた屋敷や空き地が目立ち、新しいマンションや家が建ち始めていた。その後を訪ねてみた。

 このあたりは明治末期から大正にかけ、阪急土地経営部と地元の有力者が分譲した「新屋敷住宅」だ。碁盤目に整地された大きな敷地の中を、幅広い道路が東西に走る。6メートル道路の両端に2メートルの緩衝地が設けられ、そこに住民が庭先のように植え込みやアプローチを作り、町の美観を形成している。

 ほとんどの屋敷には立派な数寄屋門が個性豊かに備わっている。洋館には布目窯変タイル張りの門柱など、10年前に見た懐かしい風景が蘇(よみがえ)った。

 空き地や朽ちかけた屋敷がなくなり、平成の建物が建ち並ぶ風景は現代の繁栄を物語っているが、昔の面影を失っていた。そんな中にあって、数少ない屋敷は輝きを保ち、平成建築の中に点在するコントラストが新しい建築のあり方を暗示しているかのようだ。競争しているようにも見え、内包しているようにも見える。

 しばらく歩いてみると目が慣れて来たからだろうか、新しい建物の中に、長い間培われた住民のこだわりが見えてきた。おしゃれな外壁の仕上げ、手の込んだ窓の造り。素敵なエントランスなど。かつての大正時代モダニズムの息吹が復活しているかのような熱さを感じた。

 一時代を終えた時、町並みは急成長する。新しい時代を迎える為には郷愁は邪魔者かもしれない。あと5年もしたら町並みの全貌が現れてくるだろう。その時、再度訪れたいものだ。

【水原哲二さん】豊中市でリフォーム会社を経営するかたわら、趣味で全国の古い街並みを散策。「水原社長のまちなみ探訪」http://grandmahomes.com/town/

更新日時 2012/03/01


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