園芸高校生の研究を特許申請
SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校の大阪府立園芸高校(池田市八王寺2-5−1)は、生徒が中心となったユニークな研究活動を特許申請した。
園芸高校の生徒らが5年前、土壌微生物の課題実験中に誤って、栄養分の全く入っていない蒸留水を固化した寒天を作ってしまったが、微生物が生育できないはずの寒天上で生育するカビを発見した。翌年、このカビが寒天を分解消化して糖を作り出していることを証明し、一旦そこで研究は止まった。
新たに入学した生徒らは、寒天で育つこのカビは、海藻成分を栄養源にしていることを意味しているとの観点から、海藻そのものを分解させてみることにした。数多くの実験を通じ、海藻を直接分解し糖を得ることができることを確かめるとともに、DNA分析でカビの種類を特定することともできた。さらに、海藻から生成された糖をアルコール発酵させるバクテリアを分離することにも成功した。失敗の中から見出された発見で、しかも、海藻を陸上の微生物で処理するという、逆転の発想だった。
園芸高校、3か年の研究と実験の積み重ねを「海藻の糖化方法及びアルコールの製造方法」として特許申請した。
以下は、特許申請の概要。
【技術分野】
本発明は、海藻から還元糖を製造する海藻の糖化方法に関する。また、海藻の糖化方法により得られる糖を原料とするアルコールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
寒天は、紅藻類の1種であるテングサ等に含まれる粘液質を乾燥して製造する多糖類である。寒天は、冷水に入れ、加熱した後、38℃以下に保持すると、1%以下の濃度でもゲル化する。また、ゲル化すると、85℃以上に加熱しないと溶けない性質があるため、口の中に入れても溶けない。また、寒天は、海洋性細菌と腸内細菌の一部を除き、消化し利用できる微生物はないとされ、19世紀のロベルト・コッホ以来、微生物培養の培地の固化剤(ゲル化剤)として利用されている。したがって、テングサ等の紅藻類を再生可能な有機資源として有効利用するために、糖化方法等に関する新しい技術が必要である。
アオサは、緑藻類の1種であり、近年、国内外の沿岸部における海水の富栄養化により異常繁殖し、沿岸部に堆積して景観を悪化し、腐敗して悪臭を放ち、グリーンタイドと呼ばれ、環境問題になっている。アオサが異常繁殖する理由の1つは、高い増殖率にあり、アオサの1種であるミナミアオノリの日間成長率は112%であるため、1週間で2倍以上に成長する。したがって、アオサ等の緑藻類の有効な利用方法を確立することにより、環境問題を解消し、高い成長率に基づき有望な有機資源として利用する必要がある。
【発明の概要】
本発明は、テングサ等の紅藻類や、アオサ等の緑藻類を含む海藻から還元糖を製造する海藻の糖化方法を提供し、さらに製造した糖からのアルコールの製造方法を提供し、増殖可能な有機資源である海藻の有効利用方法を提供することを課題とする。
本発明の海藻の糖化方法は、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)により海藻から還元糖を製造する方法であり、増殖可能な有機資源である海藻を有効に利用することが可能である。フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)として、好ましく利用することができ、また海藻は、緑藻類が好適であり、環境問題の解消に寄与する。
フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)を海藻に接種して培養し、その海藻からフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)の酵素液を抽出し、抽出した酵素液により海藻から還元糖を製造する方法が好ましい。
さらに、還元糖収率を高める点で、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)を接種する海藻と、酵素液により還元糖を製造する海藻とが、同一の属に分類される態様が好適である。また、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)を海藻に接種して培養し、菌を培養した海藻を粉砕し、粉砕した海藻からフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)の酵素液を抽出すると、高い還元糖濃度が得られる。一方、酵素液により海藻から還元糖を製造する工程において、粉砕した海藻を基質として使用すると、還元糖の収量を高めることができる。
本発明のアルコールの製造方法は、海藻の糖化方法により得られる糖からアルコールを製造する方法であって、エンテロバクター(Enterobacter)属に含まれ、海藻を有効に利用することができる。
【発明の効果】
本発明によれば、海藻から還元糖を製造することができる。また、製造した糖からアルコールを製造することができる。したがって、増殖可能な有機資源である海藻の有効利用を図ることができる。
◆園芸高校は海藻上で育つカビを見てもらうことも考えている。
<予定> 12月29日~1月3日を除く随時(要調整) 園芸高校内・バイオ実験室
<連絡窓口> 大阪府立園芸高等学校 広報担当 西村秀洋
電話072-761-8830 FAX072-761-9295
電子メール koho@engei.osaka-c.ed.jp
=情報提供・池田市(梶川伸)2016.12.20
更新日時 2016/12/20