遺跡発掘現場で光る、職人の技と道具
北摂は古代の遺跡が多い地域だ。豊中駅から西へ進んだ豊中市玉井町でも、12月末まで大規模な遺跡発掘調査が行われている。
約4300平方メートルの範囲で調査が続いているのは、弥生時代から古墳時代にかけての遺構が見られる新免遺跡だ。一見すると普通の工事現場のようだが、遺跡発掘のプロたちが、独特の道具を用いて慎重かつ丁寧な作業をしている。
最初に重機で大まかに掘った後、シャベルやツルハシで掘り進める。班長として作業を指揮する那須勝博さんに、話を聞いた。「礫(れき)がなくなり、昔からの地層になったところで、テガリという両刃の道具を使って地面を削り取っていく。そこが遺構かどうかは、土の色で見極める。柱の跡など、深さのある遺構は影になるため土の色の微妙な変化がわからないから、少しずつ土を掘り出して、日差しに当てて確認する。掘りすぎた場合のやり直しは絶対にきかないので、慎重にね」と話す。
見せてもらった道具は、どれも市販されていない。「ホームセンターで買ってきた物を、使いやすいよう作りかえる。半円型のオタマという道具は、食器のオタマを強化したもの。スコップも先端を曲げて、深くかき出せるようにしてるし、テガリも元々は園芸道具」。それぞれの手になじんだ道具が、今と昔をつなぐ。「隠れていた宝を見つけた時の気持ちはたまらない」と笑う。
遺構を囲む白い線は、石灰を水で溶いたものを使う。自治体によって、スプレーを使うところや、石灰をそのまま引くところもある。遺構の中に、楊枝(ようじ)が指してあるのを見付けた。実測が終わった印という。数メートルの足場は、上から遺跡を見渡して、どのあたりに何があるかを予測するために登る。
地道な作業の中に、職人たちの技が光っている。(礒野健一)
更新日時 2013/12/10