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ど迫力ゴジラが並ぶ歯科医院 中村知治さん

診療室に飾られた、ゴジラをはじめとするたくさんのフィギュアと中村さん。診療後に、写真を撮る患者も少なくないという

 銀座の街を踏みつぶすゴジラ、国会議事堂を破壊するゴジラ、天を仰いで雄たけびを上げるゴジラ。映画のワンシーンをそのまま抜き出した精巧なフィギュアが並ぶのは、模型店ではない。池田市満寿美町の中村歯科医院の診療室だ。
 それらすべてを製作したのは、院長の中村知治さんだ。「子どものころから模型作りが趣味で、そのうち既成のものでは満足できなくなった。フィギュアで使う樹脂も、歯の型を取るためのものとして身近にあり、環境は整っていた」と話す。自作を始めた1980年ごろは、フィギュア作りを趣味とする人も少なく、東京で開かれたイベントの来場者は2日間で、まだ2000人ほどだったという。
 モチーフはゴジラを中心に、怪獣が多い。「ゴジラも時代とともにデザインや動きが変わる。中でも人気が高いのは、白黒映画の初代ゴジラ。撮影に使った着ぐるみは2つあったようで、シーンによって頭の大きさも違う」と説明する。製作時に設計図は書かず、感覚で作り始める。「大事なのは背中のライン。その角度で重さを表現する。重さが伝わらないと、リアリティーが出ない」と、その背をなぞった。彩色も簡単ではない。ベースの色を決めて全体に塗った後、陰影や光沢を表現するため、微妙に濃度を変えて何度も重ね塗りを続ける。1つの作品が仕上がるまで、だいたい半年かかる。
 製作活動は診療が終わった後、午前1時ごろまで歯科技工室に閉じこもり、没頭する。今は体力的にもしんどいので、新作は年に1作品というペースに抑えている。ちなみに中村さんが作ったゴジラは、上下のあごが分離するが、しっかりとかみ合うのは、さすが歯医者さんといったところだ。
 「患者さんがフィギュアを見て、驚いたり笑ったりすると、うれしいですね。これからも自分の作りたいものを、マイペースで作ります」。中村さんの瞳が、少年のように輝いた。(礒野健一)

更新日時 2013/09/12


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