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1988年から届いた手紙  鉄道少年の夢かない運転士

石井さんが小学5年生の時に書いた手紙を読む、今小学5年生の息子・洋孝君たち。同い年の父の手紙の感想は「字が汚い」

池田に新幹線の駅はできてますか? 五月山はどうですか?
 池田市城南に住む石井孝夫さんが、小学5年生の時に書いた手紙の中の質問だ。相手は2013年の自分。池田青年会議所は1988年に「25年後の自分に宛てた未来郵便」を企画し、手紙を入れたタイムカプセルを今年掘り起こして、差し出し人が判明した人に順次届けている。石井さんは10月2日に受け取った。
 石井さんの父親は、大の鉄道マニアだった。「物心ついたころから一緒に全国を鉄道旅行していた。私も自然と鉄道が好きになり、運転士になるのが夢になった」と話す。手紙のことは「連絡が来るまで、書いたことすら忘れていた」というが、電車の運転士になりたいという夢は忘れなかった少年は今、JR西日本で運転士をしている。「運転士として初めての乗務の日に父が危篤になり、私が運転する電車に乗せられなかったのが心残り。子どものころ、父の実家がある九州へは、寝台特急『彗星』で帰っていたが、その最終運行(2005年)を担当した時は、父の遺影を抱いていた。今の自分があるのは父のおかげ」と振り返った。
10月26日に、25年後の2038年に開封するタイムカプセルを再び埋設する。石井さんの息子の洋孝君も、ちょうど小学5年生で、それに入れる手紙を書くという。石井さんも手紙を書くつもりだが「その時はもう還暦。まだ運転しているのかな」と遠い彼方に目をやる。
 「11歳の時の自分には、『夢、かなったぞ』と言いたい」と石井さん。手紙の中にいる少年の自分に、誇らしそうな笑顔を浮かべた。(礒野健一)

更新日時 2013/10/09


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