薬剤師でパン職人 藤岡洋彦さん
卵と牛乳を使わず、天然酵母と粗塩や三温糖を使ったパンを手作りし販売する「パン工房 フォーゲル」が、池田市旭丘にある。現役の薬剤師の藤岡洋彦さんが2役をこなしてオーナーを務め、「体に優しく、おいしいパンを食べてもらえるように」と始めた店だ。店舗での販売のほか、配達やネット通販もしている。
藤岡さんの1日は慌ただしい。朝は4時半に起きて、5時には店の調理場で1次発酵が済んだパン生地を型に入れる成形作業をする。8時半からバイクで伊丹市内の薬局に出勤。昼休みを利用して午後1時半には調理場に戻り、パンを焼く。4時半に再び薬局に戻り、7時半まで勤務。8時ごろまた店に戻り、10時まで明日の準備をする。藤岡さんが留守の間は、パートタイムの女性スタッフが店を預かる。二足のわらじを履きながらの毎日は忙しい。藤岡さんは「家族には迷惑をかけっぱなしで」と苦笑する。
薬剤師という安定した職業に就きながらも、パン作りを辞めないのには理由がある。藤岡さんは1995年から12年間、別のパン工房を大阪市内で経営していた。「材料にこだわった焼きたてパン」が好評で、北新地の有名レストランや大手デパートが顧客になった。卸し売り専門として繁盛した勢いに乗り、7年前に箕面市内に販売店を出店。しかし経営がうまくいかず、ほどなく店をたたむことになった。しばらく薬剤師の職に戻り、パン作りから離れていたが、「パンの仕事を途中で終わらせたくない」と再び店を構えた。
「店は正直もうかっていません。薬局の給料で補充している」と藤岡さん。「月並みだけど、お客さんに『おいしい』と言ってもらうと本当にうれしい。だから続けられる」と笑みを見せる。(早川方子)
【パン工房 フォーゲル】
池田市旭丘1-5-31▽電話072-737-9955▽
ホームページ(http://www.rakuten.co.jp/vogel)でネット通販も受け付け
更新日時 2012/09/14