このエントリーをはてなブックマークに追加

五月山の桜が衰弱 生育対策、植樹も懸命に

「桜は剪定(せんてい)に弱い。観光地では、安全を考えると切らざるを得ない場合もある。それも衰弱の原因」と谷畑さん

 池田市の3分の1を占める五月山に今年も桜の季節が巡ってきた。約3万5000本と言われる桜の大半はソメイヨシノだ。ソメイヨシノは戦後復興期に全国で大量に植樹され、五月山でも昭和30年代に多くが植樹された。「老齢化し、衰弱したソメイヨシノは全国的にも増えている。五月山も例外ではない」と、池田市公共施設管理公社・公園管理センター所長の谷畑裕行さんは話す。

 「昔は、そりゃあ豪華な桜のトンネルだった」と懐かしむ谷畑さんの案内で、五月山ドライブウェイを走った。沿道にあるソメイヨシノは、大きく枝を伸ばした木が少なかった。腐朽菌などが繁殖した幹やてんぐ巣病に侵された枝も目にした。野生種のヤマザクラなどと比べ、ソメイヨシノは特にてんぐ巣病などの病気に弱いという。「てんぐ巣病にかかると、枝は枯死する。枯死部から腐朽菌が侵入して他の枝や幹にまで腐朽が進み、樹勢が衰弱していく。病木を切り取らなければならないケースが増えている」と谷畑さんは説明する。

 池田市は2002年、桜の苑(その)と呼ばれた場所を中心に約2000本の桜の調査をした。その結果、病気と診断されたソメイヨシノは9割にも達し、約1200本は伐採された。谷畑さんは「密集して植えられていたため、てんぐ巣病は一気に広がった」と残念そうに話す。わずかな根元だけを残したソメイヨシノの幹の切り株は、切断面が痛々しかった。

 また、ソメイヨシノには忌地(いやじ)があり、同じ場所で育てることが難しいという。「伐採した後、同じ場所にソメイヨシノは育たない。客土しても、根が客土部分を突き抜けると、育たなくなる」と話し、「木の間隔は10メートルが理想と言われているが、どの木も密集しすぎている。20~30年ほど前に植樹した木も、すでに元気がない」と谷畑さんは困った顔を見せていた。

 新たな苗木も植樹されていた。個人の名前が書かれたプレートが掛かっている木もある。市やボランティア団体は、老齢化するソメイヨシノに手をこまねいているわけではない。五月山を守り育てるボランティア団体「市民の森をつくる会」などが地道な保全活動にあたったり、市民の手でも植樹を続けたりしている。ソメイヨシノの代わりにヤマザクラやヤマモミジなどを植え、桜の名所を守ろうとしている。

 (進藤郁美)

池田市公共施設管理公社 五月山

更新日時 2012/03/21


関連地図情報