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豊中市文化芸術センター座談会(後半)

 前半より続く(http://www.machigoto.jp/art_detail.php?art_id=1784)

梶川「新しいホールの運営は、市民と協働というものを目玉にしていますが、そのあたりはどんな考えですか」

橋本「運営の中でも、警備や清掃といった基本は業者に委託しますし、舞台設備の操作なども専門家を雇うことになると思います。もちろんできる部分は市民にもお願いしたいんですが、危険を伴うこともありますので。だから市民に入ってもらうのは、どのような公演をしていくのか、イベントを企画していくのかという部分ですね」

梶川「イベントを企画する人として入ってもらうと」

橋本「いきなり開館1年目から市民にお任せするというのは難しいと思いますので、開館から何年後というのはわかりませんが、プロデューサー的な働きができる人材を、徐々に育成していきたいです」

薪先「今も高校生のダンス大会みたいなものをやってますよね。あれは、高校生に運営を任せているんですかね」

橋本「あれは市の青少年課がやっているんですが、発表するだけでなく、イベントを運営していくことにも重点を置いていますね」

梶川「館長を民間から採用するという考えはどうですか?」

橋本「今は市が直営でやっているんですが、全国のホールの約6割が指定管理者制度をとってます。その多くが文化振興財団という組織で運営しています。池田もそうですね。世の中の流れはそっちですね」

梶川「豊中ゆかりのビッグネーム、例えば山田洋二さんを連れてきて芸術監督になってもらうとかは有り得ますか?」

橋本「著名な方をお招きすれば、それに伴って大きなイベントができたり、著名な人を呼んだりできますが、芸術監督が何年後かに変わってしまった時に、一貫した方向性が保てるかどうか。ずっと同じ人がやってくれればいいんですが、そういうわけにもいかないでしょう。ならば運営に市民が参加して人材が育成されていく中で、豊中らしいセンターができてくればいいんじゃないかと思います。もちろん、誰かにアドバイザーという形で入ってもらうのはあるかと思います。とりあえず2012年度から、開館を見据えた人材を育成する講座を開きたいと考えています」

梶川「市民でやっていくというのは難易度は高いけれども、成功したらとても素晴らしいものになりますね。自分たちの文化を自分たちで作るという」

田中「育成というか、今ある人材の掘り起こしでは? いっぱいすごい方いますよ、豊中には」

橋本「もちろんです。ただ、今までまったく経験のない方にも参加してもらえるような形にしたいです」

丹波「今までも、そうした講座みたいなものはしていたの?」

橋本「やっていましたが、公民館講座みたいなもので終わってました」

梶川「例は違いますが、池田市が小学校校区ごとに1000万円の予算提案権を渡されていますよね。それが地域文化の活性化に繋がっています。同じように、このセンターの運営に1億円の予算を渡して市民に任せてみると、自覚も生まれてくるんじゃないかな」

橋本「市によっては、NPO法人を作ってそれが運営しているところもあります。市の直営のメリットがどれだけあるのか、考えることはあります。豊中には財団がありませんし、民間委託になると営利に走りすぎるというおそれもあって、そうなると本末転倒です」

梶川「この新しいセンターの役割はどういうものになるんでしょう。やはり市民のためのものということが1番なんですよね。例えば兵庫県立芸術文化センターは、大阪なんかからでも行きますが、ああした位置づけの方がいいんでしょうか」

丹波「他の市からも来てくれるようになればうれしいけどね」

薪先「豊中はアクセスがいいですからね。吹田でやった時に、劇団の人が『新幹線からすぐに来れて楽だ』と言ってました」

田中「豊中の主催事業でたくさん人が呼べたらいいですよね。市の主催事業で大ホールが満席になるというのは、なかなかありませんから」

橋本「いわゆる有名な歌手や劇団を呼ぼうとすると、1200という席数ではなかなか採算が取れないです。そして、そうしたイベントでホールの使用状況が埋まっていくと、市民が使えなくなってしまう。それではダメだと思います。だから大きな、有名なイベントは大阪市にお任せします(笑)」

梶川「他には提案ありませんか?」

薪先「さっきも言いましたけど、やっぱり市の共催事業などの影響で、土日空いていないことが多いのはなんとかしてもらいたい」

田中「せめて土日のどちらかは空けるとかして欲しいです」

橋本「現場でもなんとかしないとなという話はあります。同じところが毎回というのは避けるとか、一定の基準はいるでしょうね」

梶川「根本的なところですが、このホールの使用目的は文化芸術系だけと限定するんですか?」

橋本「今まで使われていた団体もありますので、これまでの市民会館的な使い方も許容していくと思います」

田中「物販もありなんですか?」

橋本「そうですね。例えば文化芸術系のイベントの抽選が終わった後、まだ空いているようだったら物販のイベントも入れるようにするとか、そんな形はあるんじゃないかと思います。また、豊中市民の方が使う場合と、市外の方が使う場合では料金で差をつけようと思います」

梶川「今は頭に(仮称)とついてますが、センターの名前はどんな感じでつけるんですか?」

橋本「公募という考えと、ネーミングライツという考えがありますね。ネーミングライツの場合は条例も定めないといけないので、なるべく早いうちにしないといけません。正式名称とは別に愛称を募集するという考えもあります」

丹波「美術、博物のスペースというのはどれくらいの大きさなんですか?」

橋本「今のところ美術が500平方メートルくらいで考えています。天井高も高い方が良いのですが、5メートルくらいになってしまうと照明の交換も危険な作業になってしまい、運営も考えてどのくらいの規模が使いやすいのか、美術の専門家にも話を聞いているところです」

薪先「常設ではないんですよね?」

橋本「そうですね。逆に博物の方は常設展示が中心になる予定です。広さは100平方メートルくらい。豊中市には国の重要文化財に指定されているものもあるんですが、それらを展示する場合は文化庁の基準をクリアしないといけないので、それは満たしていくつもりです。これまではそうしたスペースがなかったので、他の市に持って行って、他の市民に見てもらっていたんですけどね(笑)」

梶川「文化財はどういうものが多いんですか?」

橋本「埋蔵文化財、考古品が多いですね。担当でないのではっきりとした数はわかりませんが、数万点はあるようです」

梁井「入れ替えで展示していくのかな」

橋本「どれくらいのペースでできるかわかりませんが、入れ替えはしていきたいですね」

田中「美術スペースは個展やイベントが行われていないときは、空なんですか?」

橋本「基本的にはそうですが、豊中市も寄贈されたり購入したものなど、たくさんの美術品を所蔵していますので、それを有効に活用していきたいと思います。もちろんそれで市民の個展が開けないような状況にはしないつもりです」

梶川「11月3日に小曽根の西福寺へ伊藤若冲の絵を見に行ったけど、豊中にあんな素晴らしいものがあるんですよね。あれを見に、東京からもお客さんが来ているのはすごい」

橋本「私も今回ようやく見に行くことができました。毎年1日だけの公開なので、つい忘れてしまうんですよね。これは個人的な妄想ですが、あの伊藤若冲の作品を、センターの開館に合わせてお借りして展覧会が開ければなと思っています(笑)」

梶川「それができたら、すごい人が来るね」

橋本「アクア文化ホールの緞帳(どんちょう)も伊藤若冲の絵なんですよね」

梶川「そろそろまとめに入りましょうか。細かいところも含めて、改めてセンターに期待するところ、要望なんかあったら教えてください」

丹波「色々やりたいことが混ざって、中途半端なものになるのだけはやめてほしいですね」

薪先「使用時間ですが、前は午後10時になるとバシッと電気も切られてしまったんですよ。搬出作業中で、真っ暗な中なんとかやったということもあったので、もう少し余裕が欲しいかな」

橋本「どうしても周りが民家なので、時間は厳守してもらう形でお願いします。ただ、搬入口を壁で覆ってしまえば、そこは電気をつけて作業も可能ですし、何らか対策は考えたいです」

梁井「展示スペースが取れなくて、仕方なく大阪で個展を開いている友だちもいたので、美術スペースができるのはうれしいです」

薪先「レストランや喫茶店は入るんですか?」

橋本「飲み物や、軽食が食べられるスペースは考えてますけど、本格的なレストランみたいなものは入れないと思います。それからオープンホワイエと言うんですか、大きめのロビーでちょっとした生演奏会を開いたり、40~50人規模のイベントを開いてみたりしたいですね」

田中「ついでに寄ることのできる、敷居の低いものになってほしいです。年に1回大きなものを見に行くのではなく、ふと前を通りがかった時に、『ホワイエで何かやってるな。ちょっとのぞいてみようか』となるようなね」

薪先「他には自転車置き場をしっかり作って欲しいです。それから公演に来た劇団が使うための洗濯乾燥機もあったらうれしいですね。前は洗濯機しかなくて、市内のコインランドリーを案内したこともあったんですよ」

橋本「シャワーもいりますよね。共用にはなると思いますが、お風呂とかはあった方がいいんでしょうか?」

薪先「お風呂まではいらないんじゃないかな。あと、着物の人もいるので、和室はあった方がいいと思います」

丹波「舞踊をやる人もいるからね」

梶川「そんなところでよろしいでしょうか。また2回目があるかもしれないので、その時はよろしくお願いいたします。本日はお集まりいただき、ありがとうございました」

豊中市文化芸術センター

更新日時 2012/01/12


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