豊中市文化芸術センター座談会(前半)
豊中市曽根東町の豊中市民会館が老朽化のため、2010年度で閉鎖された。豊中市は同じ場所に、豊中市文化芸術センター(仮称)を建設する予定で、2015年度のオープンを目指している。
マチゴトはセンターを利用する団体の代表者による座談会を開き、どのような施設を望むか、意見を出し合ってもらった。参加者は、とよなか市民文化会議座長の梁井利恵子さん、市民劇場「萌」代表の丹波浩二さん、ほたる企画の田中久美子さん、豊中池田おやこ劇場の薪先悦子さん。市から文化芸術センター開設準備チームの橋本信也チーム長も加わった。進行はマチゴト編集長の梶川伸が務めた。
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梶川「豊中市民会館が昨年度末で閉館となり、豊中では新しい文化拠点の計画が立てられています。今日は色々な文化事業に携わっている皆さんに集まっていただいて、新しい会館や豊中の文化事業について、座談会というか、雑談会のような気軽な雰囲気で、お話をしてもらえればと思っています。では、最初に橋本さんから現在の状況をざっと説明してもらいましょう」
橋本「建物は豊中市民会館を取り壊して、その跡地に新たに建設します。豊中市が発行したパンフレットには、『(仮称)豊中市文化芸術センター』として、ホールだけでなく、美術や博物施設も含めた総合的な施設を建設する構想となっています。本当はこのままの計画で進められれば良かったのですが、やはり財政状況を考えると、この規模のものは難しいとなりました。今は身の丈にあったものをということで中間報告書をまとめており、間もなく公開できるようになると思います(現在は豊中市のホームページhttp://www.city.toyonaka.osaka.jp/top/jinken_gakushu/bunka/center_keikaku/index.htmlで閲覧可能)。具体的な施設の概要はそれからなのですが、施設の性格として、『既存の中央公民館、アクア文化ホールと連携』『市民と協働して運営』『市民の交流の場』『地域発信の中心地』といったものは変わりません」
梶川「元々の構想から大きく変わった点というのは、どんなところですか?」
橋本「ホールの中に美術館と博物館を併設する構想でしたが、建設費はもちろんとして、開館後の運営費を考えると厳しいかなと。学芸員を置いたりね。その代わり『館』とは言えないものの、そうしたものを展示するスペース、『室』といった規模のものは作ろうと考えています。ホールの規模については、基本構想のままです。外観で言えば、構想では4階建てだったものが、3階建てへと縮小しています」
梶川「オープンまでのスケジュールはどんな感じですか?」
橋本「パンフレットに予定は書かれていますが、まったくこの通りというわけにはいかないかもしれません。2011年度中に基本設計をまとめる予定です。設計を担当する業者も決まり、何度か話をしています」
梶川「業者はどこですか?」
橋本「日建設計ですね。この近くだと兵庫県立芸術文化センターとか、最近だと東京スカイツリーもそうですね。中央公民館もアクア文化ホールも日建さんです」
田中「まだ設計図はできてないんですか?」
橋本「まだ細部まで詰めた図面はできませんが、『この部分にこれ、この部分にそれ』といった、簡単なものはあります。まず導線計画というか、人の流れをどうするかといったものを、隣のアクアや公民館との連携も考えながら計画をしているところです。そして2012年度にしっかりとした整備計画を策定します」
田中「今の市民会館の場所に建てるんですよね?」
橋本「はい。なので土壌調査も、特に問題なく済むと思ってます。その後2013年度中に現在の会館を解体し、建設工事に着工。2015年度の新オープンを予定しています。できる限り早い段階、春ぐらいにできればと思ってます」
梶川「ありがとうございました。それじゃ、これを受けた形で、ざっくばらんに話をしていきましょう。具体的な細かい部分が出た方が、色々と役に立つ情報だと思うので、前の施設や今ある他の施設について、使う側から『こうしてほしい』『あれがあったら』といった点を挙げていってもらいましょう」
丹波「前の市民会館を使った時は、舞台袖がすごく狭いなって思いました。楽屋も狭いし」
薪先「シャワーは水だったし(笑)」
丹波「そう(笑)。とにかく袖が狭かったので、色々準備したりするのが大変だったね。理想は舞台と同じくらいの広さが」
梶川「それは素晴らしい(笑)。最近のホールはだいたい広く取ってるものなんですか?」
丹波「そうですね。練習をする場所が舞台と同じ広さだとうれしいです。例えば小ホールが、座席数は少なくても舞台の広さが同じなら、練習を大ホールを借りなくてもできるようになります」
梶川「なるほど。他には何かありますか」
田中「アクア文化ホールですが、舞台の後ろ、奥行きが狭くて行き来できないんですよ。どうしてもの時は、後ろにある幕と壁の間をすり抜けていくという感じでね(笑)」
薪先「あれは音楽ホールとして作ったからではあるんですけどね」
田中「ええ。だから残響がすごく良くて、音楽ホールとして優秀なんです。」
薪先「でも、今はそういう使われ方だけではないもんね」
田中「岡町の伝統芸能館は、バランスが悪いですよね」
丹波「舞台がすごく狭い」
田中「日舞とかやるとかなりきついよね」
梶川「落語はよくやってるよね」
薪先「落語やってますね。そうした話芸とか、動かないものに丁度いいんです。でも、もう少し客席がほしいかな。新ホールは席数、大が1200で小が300となってますけど」
田中「小ホールが中途半端なものにならないか心配だなぁ」
丹波「席数300程度というのは、みんなが一番使いやすい大きさだと思う」
橋本「前にあった第1集会室、ただの大きな会議室なんですけど、使用料が安かったこともあって結構利用頻度が高かったんです。そうしたものにするのか、ちゃんとした劇場型にするのか。劇場型にすると、どうしても使用料は高く設定してしまうことになる」
丹波「小ホールがどんなものになるかは結構大事」
橋本「隣のアクアがだいたい席数500で中ホール的な意味合いとなれば、席数300の小ホールというキャパはバランスが取れるかなと」
薪先「今、アクアが全然使用予約取れないんですよ。くじ引きで取るんだけれど、運営が市民とのコラボレーション企画というものになっていくと、そっちに優先権が与えられて、他の団体が今以上に取りにくくなるんじゃないかって心配があります」
田中「市の主催事業はいいんだけど、共催事業まで優先権が与えられちゃうと、本当に土日は空きがない状態になる。共催については考えてほしいですね」
橋本「確かに共催事業で市が抑えてしまうことは多いですね。2、8月は割と少ないんですけど、春や秋はいっぱいになってしまいます」
丹波「小ホール以外に、会議室や練習室もあるみたいですが、どんな感じになるんですか?」
橋本「建設費を絞らなくてはいけない状況なので、面積も大きく取れないです。なので施設の多目的化、例えば楽屋が練習室としても使えるように設計するとか、できるだけコンパクトにしていければと考えています」
丹波「さっきも言いましたけど、大ホールは舞台袖と、それから奥行きは広くしてほしいですね」
橋本「舞台袖は上手、下手ともに11メートルの予定です。奥行きも市民会館が11メートルだったのに対して、16メートルで計画をしています。間口は逆に広すぎるという意見もあって、23メートルから20メートルになります。本当は兵庫県立芸術文化センターみたいに、舞台と同じ大きさのものが両袖と背面にあるのが理想なんですが、市立の会館ではそこまでのものを作る予算はないです」
梶川「奥行き16メートルというのは、やる方からするとどうなんですか?」
丹波「もちろん可能な限り広い方がいいんですが、前に比べるといいんじゃないかと思います」
薪先「搬入も市民会館は大変でしたね」
梶川「ホールの音響についてはどうですか」
薪先「大ホールの演劇をした場合、前の席は生の声が通り、後ろの席はマイクを通したスピーカーの音が通るのに、真ん中の席がよく聞き取れないということがあります」
田中「既存のホールには、音響や照明機材について『本当に機材のことをわかって購入しているのかな?』と思うものもある。使うには距離が近すぎる照明や、今時使わない規格の音響機材が入ってたりして」
梶川「観客という立場から、何か希望するものはありますか?」
梁井「やっぱり広さは気になりますね。全体の席数もそうですが、前後の間隔がゆったりしているのかとか」
薪先「以前やったホールで、椅子がすごく立派で背もたれも沈むんですが、そういうものだと子どもは埋もれちゃうんですよ(笑)。高すぎる背もたれも、子どもには不便ですし、子ども用の補助椅子とか、クッションは用意してほしいですね。映画館にあるような」
橋本「それはいいですね」
丹波「段差も見やすいものを考えて欲しい」
橋本「今のアクア文化ホールはどうですか」
田中「アクアはいいんじゃないかな」
橋本「すごくゆったりとは言えないけれど、まあまあ快適なスペースですよね。座席の並べ方も、前の席と互い違いにするとか、シンフォニーホールみたいに斜めになっているとか、色々な形を検討しています」
薪先「細かいことですけど、席順表示が、前から『あ』なのか、後ろから『あ』というのは、どっちが探しやすいんでしょうね」
橋本「表示する場所も、普通は背もたれにあるんですが、床にもあった方がいいのかなと」
梁井「荷物を置く場所に困ることが多いので、置き場みたいなのがあればいいな」
薪先「椅子の下にネットのかごがついているところはあるよね」
田中「リターナルロッカー、100円入れて鍵閉めて、開けるとまた100円戻ってくるロッカー。あれはどうですか?」
梁井「クロークがあれば一番だけど、そんなホールはなかなかないですよね(笑)」
橋本「クロークはいい案ですが、実際に作ると場所はもちろん、預かる人を雇わないといけなくなるので経費がね(笑)」
田中「預かる人は、舞台を利用する側が出せばいいんじゃないかな」
橋本「そうですね。だからクロークという部屋を取るのではなく、そこも壁をひっくり返したら普段は別に利用できるスペースになったりすればいいですね」
梁井「子どもを連れていくお客さん用に、何か対策があった方がいいのかな」
薪先「保育ルーム? 箕面のメイプルホールとかにありますよね」
橋本「キッズルームみたいなものは考えているんですよ。他の観客とは別にガラスを張った部屋で、親子で一緒に見られるスペースですね。一時期そうした施設を作るのがはやっていたみたいです。ただ、どうも利用率が低いみたいで、最近のホールには作られてないんですよ」
梶川「その理由はなんなんだろう?」
薪先「結局、生の音が聴きたいというのがあるんじゃないかな」
梁井「おやこ劇場さんみたいに子どもが騒ぐことも許容している催しに参加して、親子一緒に楽しむのか、あるいは子どもは預けて、大人として楽しんでくるのか、それは区別しないといけないのかもしれない」
後半へつづく(http://www.machigoto.jp/art_detail.php?art_id=1785)
更新日時 2012/01/12