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編集長のズボラ料理(642) ジンのフラワーカクテル

1週間たっても、ジンに変化はなかった

 「うちの小さな庭の花をグラスに浮べたフラワーカクテル、今回は菊です」。そう説明をつけて、フェイスブックに写真を投稿した。
 しょうもない投稿だったが、突拍子もない反応があった。「下はジンですか!旨いのかなー?」
 おもろい発想をする人や。さっそく返事をした。「これは飲み物ではなく、鑑賞用なので、ただの水です」。まじめに書いたが、つい付け加えた。「ジンもやってみます」
 このやり取り、「何のこっちゃ」、と思う人がいるに違いない。簡単に説明を。
 うちの庭は小さいが、花はいくつか育てている。季節の花を切って、グラスに水を張り、その上に浮べている。ガラス容器はブランデーグラスを押すつぶしたような形をしている。そこで、ちょっと気取って、「フラワーカクテル」と名づけている。やり取りは、白い菊の花を浮かべた時だった。
 そもそもは、一輪挿しとしてテーブルの上を飾っていた。いつも同じ花瓶では飽きるので、時々買う。といっても、凝ったものではない。金のかからない花に、高い花瓶はおかしいからだ。
 気に入っているのは、ガラス容器製造会社の「Cute Glass Shop and Gallery」(大阪市)で買った細長いガラス瓶。ショウウインドーを眺めていたら、店員さんに誘われて店に入った。古い建物をリノベーションしていていて、店内から通じる防空壕が残してあり、そこも案内してもらった。
 お礼の意味で、一輪挿し用に細長いガラス瓶を買った。200円。お礼にしてはケチくさいが、「金のかからない花に高い花瓶はふさわしくない」原則を貫いた。
 細長い瓶に飽きてきたころ、スーパーで背の低いグラスを見つけた。300円。原則に照らし合わせ、許容範囲判断した。花を挿したり、生け花にする形ではないので、浮かべることにした。寺に行けば、花を浮かべた花手水がはやりでもある。
、フェイスブックでの約束が実行するため、ジンを買った。新聞記者現役時代に、大阪市・北新地の店「瀧」でジンライムを何回か飲んだが、ジンを口にするのはそれ以来のことだった。
 ジンをグラスに注ぐ。それだけでは物足りないので、冷蔵庫にあったユズを少し絞り、さらに皮も切って入れた。小さな庭のゼラニウムとビオラを浮かべた。ただ、それだけ。
 味はいかに。ジンとユズの味だけ。花の味はしない。なーんだ。あえて言えば、花がくちびるにまとわりついてきて、やや飲みにくいのが特徴だった。
 花に影響はあるのか。1週間ほど経過観察をしたが、変化はない。ゼラニウムは赤いが、酔ったせいではなく、もともとの色だ。ジンは1週間もおいたので、飲む気にならず、残念なが廃棄した。これがまじめで壮大な試みの顛末である。(梶川伸)2023.01.06

更新日時 2023/01/05


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