思いやり
それは、ある日、一人で電車に乗ったときのこと。いつからだろう、僕の座っているすぐそばに、おじいさんが一人、家族に支えられて、立っていた。その家族はときおり、「席が空いたら座れるから」とおじいさんに声をかけていた。きこえてはいたけど、きこえないふりをして、ぼくはじっと本を読んでいた。そして、2つとなりにいた人が、電車を降りたとき、おじいさんはその席に座った。これで席を替わらずにすんだ、とも言えるかもしれない。でも、そう思えなかった。あのとき、もし自分が席を替わっていたら、おじいさんはもう少し楽だったのだろうか。僕に思いやりの心があれば。電車を降りてからも、しばらくそのことを考えていた。=石橋中学校、森本達朗さん(池田「伝えよう!いのちのつながり」第13回作品から)
更新日時 2011/03/03