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心動いた瞬間を切り取る 切り絵作家の中野俊さん

祇園祭を描いた作品を手にする中野さん。写真の腕も高く、10月は池田栄本町郵便局で写真展を開く

 黒く太い縁取りで、生き生きとした人物や、風や光の動きが伝わる情景を表現する。それが、池田市神田に住む切り絵作家・中野俊さんの作品だ。
 子どものころから絵を習い、学生時代には個展も開いた。「アルバイト代はすべて画材。絵で飯を食べていきたかったが、そう簡単ではなかった」と、一般企業に就職。40年余りのサラリーマン生活を終え、再び絵の世界に戻った。「北斎や広重の浮世絵にあこがれたが、版画は1人では難しい。ならば、それと似た表現力を持つ切り絵はどうかと考えた」という。
 モチーフは日本の祭りや原風景が多い。「その瞬間の空気を体感するため、何度も足を運ぶ。奈良・東大寺のお水取りは8回行ったかな」。祇園祭は長刀鉾(なぎなたぼこ)を描いたが、しめ縄切りや辻回しではなく、大役を終えた稚児(ちご)が山鉾を降りる場面を選んだ。「皆が拍手をし、緊張が解けた稚児を中心に和やかな空気になる。これだ、と思った」。製作はデッサンから始め、約1カ月かける。
 今年は東北五大祭も見た。その空気を、どう表現するか楽しみだ。(礒野健一)

更新日時 2013/09/10


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