来年80年「不死王閣」の女将 岡本尚子さん
池田市伏尾町にある温泉宿「不死王閣」は2013年、創業80年を迎える。アユの養魚場でお客さんにアユを釣ってもらい、料理して食べさせる料亭「伏尾の鮎(あゆ)茶屋」として1933年に創業した。その後、2代目の岡本直文・現会長が泉源を掘り当て、温泉宿の営業をスタートさせた。屋号は現在の伏尾町が昔、不死王村と言われたことから、「死なない王様は縁起がいい」と、2代目が決めたという。
「会社名は今も『伏尾の鮎茶屋』です」と女将の岡本尚子さん。専業主婦だったが、団体客の減少に直面し、15年前から裏方で旅館を支えてきた。47歳で若女将としてデビューした。着物を着て、表に出るようになった。だが、「『若』という文字は年齢的に限界でしょ」。恥ずかしくて50歳になった時、「女将になります」と宣言した。それが5年前。「従業員が喜んでくれたことが何よりうれしかった」と話す。
尚子さんは「旅館は毎日が賞味期限」と奮闘を続ける。旅館の仕事は宿泊だけでなく、立ち寄り湯や日帰り休憩、昼食、宴会など多岐にわたり、注文のビールを持って走り回ることもある。その合間を縫うように家事をこなす。忙しい毎日だが、「大したことはしていません」と穏やかに笑う。「心配りをするのが私の仕事。いろんな人に会えるし、世界が広がった。楽しんでいます」
おっとりとしたタイプに見えるが、最後に「紅葉を眺めながら入る露天風呂はお薦め。様々なプランを用意しています」と、女将の顔になった。(進藤郁美)
更新日時 2012/10/11