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池田を愛し、ふるさとを愛して作詞 粂昌宏さん

「生まれ故郷の横浜の市歌も素晴らしいが、港のことばかりなのが残念。池田は市の風景や文化歴史がたくさん織り込まれているのがいい」

 学校に校歌があるように、市にも市歌がある。「豊島野のはて 山は青く水も清らか」のフレーズから始まる池田市歌に心を打たれ、歌詞の意味や、歌われた土地のことを調べた小冊子を作ったのが、池田市に住んで40年になる粂昌宏さん(72)だ。しかし、もともと池田の歴史や、歌について関心があったわけではない。

 粂さんは2007年、小学校時代の恩師が瑞宝章を叙勲された際に、感謝を込めて思い出をつづった。恩師と出会う前までのことも書き出すと、横浜大空襲で焼け出されたこと、神奈川県岡崎村(現在の平塚市)に疎開したことなどが次々に思い出され、「ふるさと」を改めて意識するようになったという。そんな時に池田市歌を聞き、歴史や自然を高らかに歌い上げる歌詞に感動した。3番の歌詞「梅かおり桃咲く中に」では、「梅は水月公園などに今も多いが、桃はどこにあるんだ?」と疑問を抱き、歌詞の通りの街になるよう池田市に提案。2009年に五月山での植樹を実現させた。

 市歌に心を動かされた粂さんは、「私も愛する池田をたたえる歌を作りたい」と思い立ち、「池田マーチ」を作詞した。歌は市制70周年記念式典前夜祭で、池田ジュニア合唱団によって歌われた。「歌った子どもたちには、大人になっても池田を忘れないでいてほしい」と願う。

 粂さんは池田に残る呉織・漢織(くれはとり・あやはとり)の伝説を題材とした「織姫バラード」や、猪名川をたたえる「猪名川よ」なども作詞し、CD化している。「お世話になってきた街、自然への恩返しのつもりで作っている。猪名川のほとりでCDを流すと、川が喜んでくれたように感じた」と話す。これまでに手がけた曲は20曲以上あるが、すべてに共通するのは感謝の気持ちだ。「人には感謝状を贈ったりできるが、ふるさとには形あるものは贈れない。だから、歌を作り、気持ち込めて歌いたい」と言う。

 粂さんの最新作は、趣味の囲碁をテーマにした歌「囲碁の歓(よろこ)び」だ。「将棋には村田英雄の『王将』があるが、囲碁にはこれといった曲がない。この歌が囲碁を代表する歌になってくれたらうれしい」と夢を語る。(礒野健一)

池田市歌

更新日時 2012/06/14


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