異文化を学ぶ うえのワールドミュージアム
世界中の国々の楽器やおもちゃ、文房具や日常品がところ狭しと並べられ、そこで生活をしてきた人が、子どもたちに説明をする。どこの立派な博物館かと思うが、これは豊中市立上野小学校で毎年開かれている「うえのワールドミュージアム」の光景だ。
上野小学校は1967年に帰国した子どもの教育研究協力校に指定されたことをきっかけに、数多くの帰国児童を受け入れてきた。ミュージアムは帰国児童の保護者が中心となって、自分たちが暮らしてきた外国の文化をともに知り、学ぼうと、約20年前から行われている。それに伴う国際交流も多く、海外の学校と、手紙やウェブを通じたやり取りも盛んだ。
中木常雄校長は「世界には色々な国や文化があり、多様な価値観があると知ることで、視野の広い人間になってほしい。そして自分で考え行動する主体性を身に付けてほしい」と語る。価値観の違いとは国の違いだけでなく、障害者やお年寄りなども含めた広いものだ。子どもたちはそれら「異なるもの」を、「異なるけど、あって当たり前のもの」「知れば楽しいもの」として、自然に受け入れていく。
会場となる教室には展示品とともに、学年別に決めたテーマの研究も、絵や写真とともに発表されている。「まず日本を知らなければ、世界はわからない。だから1年生は日本の習俗や昔話がテーマ」と、国際教育担当の大石チエコ教諭は言う。今年は5年生も、竹取物語や枕草子などの古文をテーマとした。
アメリカに7年住んだ後に帰国した保護者会の白川充子(あつこ)さんは、「海外で生まれ、日本語や日本文化に疎いまま帰国する子に対し、『日本人ならできるでしょ』と言わず、しっかり付き添ってくれる先生方はありがたい」と、上野小の体制に感謝していた。(礒野健一)
更新日時 2012/01/31