地域医療に尽力 上田病院・上田正規理事長
豊中市の国公立病院や私立病院、診療所が豊中市病院連絡協議会を組織し、地域医療の充実を目指している。地域に根差した医療体制を作っていくもので、市単位の協議会を結成した例は大阪府内では唯一といい、全国的にも珍しい。
協議会の前身は豊中市病院懇話会で、1962年に発足した。地域医療という言葉だけが先行していた時期だった。懇話会の設立に尽力したのが、豊中市庄内幸町4の医療法人善正会「上田病院」理事長の上田正規さん(82)だ。上田さんは「医療機能を明確化し、機能を分担して連携することによって、地域内で完結した医療供給体制ができる」と、各病院と診療所間の垣根を越えた連携の重要性を訴え続けてきた。
さらに、「職能団体として、働きやすい職場づくりも使命」だと診療環境の改善にも力を注いできた。1973年、豊中心身障害者対策協議会の初代会長代行を務めたのをきっかけに、障害者問題に向き合ってきた。病院の一角に簡易作業所を設け、作業所や施設の必要性を訴える足がかりを作った。障害者問題は今でもライフワークになっていると話す。
上田さんは1964年、庄内地区に49坪の診療所を開業した。当時、治療代などはある時払いで診察するなど、患者が安心して治療を受けられる病院づくりをしてきた。根底には「奉仕、感謝」があるのだという。
聴診器を持たない医師や、サラリーマン化した医師が増えていることを憂いながら、「医師には責任感と奉仕、感謝の心を持って患者と向き合ってほしい」と願う。最後に「命に未練はないが、恋することを忘れてはならないと思っている。だからいつも恋してますよ」とほほ笑み、「脳の刺激にもなる」と医者らしく付け加えた。(進藤郁美)
更新日時 2011/07/20