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新池田タクシーの乗務員 全員が救命講習終了   救命力世界1を目指す豊中市の方針に賛同

救命講習を受ける新池田タクシーの乗務員

 新池田タクシー(綿引秀憲社長、豊中市走井2)は10月末までに、乗務員全員が豊中市消防本部で「普通救命講習Ⅰ」を受講した。地域を走るタクシーとして、事故による負傷者や急病人と遭遇する可能性もあるため、豊中市が目指す「救命力世界1」に貢献するのが狙い。豊中市の谷口伸夫消防長は「乗務員全員の受講は聞いたことがない。この取り組みは他の事業所にも影響を及ぼすだろう」と期待している。
 同社は門真市にあった新進交通を引き継ぎ、2010年2月に豊中地区で営業を開始した。綿引さんが社長を務める池田タクシー(池田市天神1)が門真市にあった新進交通を引き継いだもので池田タクシーのグループ会社となった。乗務員は約60人で、新たに採用した。
 綿引社長は「地域とともに歩み、地域に愛され、地域に貢献するタクシー」を会社の方針としている。社会貢献活動の1つとして、乗務員全員が救命講習の修了書を取得することを目指した。
 豊中市は「救命力世界1」を宣言をしている。救急車が現場に到着するまでの時間が平均4.2分で、消防庁がまとめた全国平均の7.1分を大幅に下回り、心肺停止状態からの蘇生率が高いなど、「救命力」は日本のトップクラスにある。2010年度からは、小学生に対する救命講習も実施し、救命力世界1を目指している。
 講習は全乗務員を対象にして、豊中市消防本部で順次行った。消防署員や、普及員の資格を持つ新池田タクシー本社営業所の大源斉副所長らが教師役になった。講習は3時間。倒れている人を見つけたところから始まり、周囲への応援要請、119番通報の依頼、AED(自動体外式除細動器)を取り寄せる要請、患者の気道の確保、人工呼吸、心臓マッサージなど、実際の現場ですぐに活用できる内容。
 大源副所長は「実家にいた父親が倒れて亡くなった時、近くに救命法を知っている人がいれば、と思ったことがある」と話す。そんな経験もあって、普及員の資格をとった。「そのような状態に遭遇するのがゼロの方が良い。しかし、遭遇した場合には、救命法を知っているかどうかは大きな違いになる」と、講習の重要さを語る。
 綿引社長も乗務員の講習が始まる前に受講した。綿引社長は「以前に講習を受けたことはある。しかし、忘れていることを思い出す機会にもなる。いざという時に役に立つようにするためには、繰り返しが大事」と話し、乗務員の講習も定期的に実施したい考えだ。
 乗務員はタクシーの車内に掲げる名刺に「普通救命講習終了」の文字を入れている。またタクシーには、包帯、生理食塩水、人工呼吸用携帯マスク、AED設置場所の地図といった救命活動用のセットを順次に配備している。
 「社長になって、当たり前のことを当たり前にやっていくことの難しさを知った」と、綿引社長は語る。救命講習は「当たり前のこと」の延長線上にあるという。綿引社長はさらにその延長線上に、車いすの押し方といった介助の乗務員講習なども考えている。
 谷口消防長は「救急車が到着するのには頑張っても4~5分かかる。患者のそばにいる人が処置をし、救急隊員がバトンタッチをすれば、救命率は上がる。第1走者の役割は重要」と、同社の取り組みに期待を寄せている。(梶川伸)

救命力世界1

更新日時 2010/11/04


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