もういちど男と女
「指輪がほしいの」。女は唐突に言った。卵巣膿腫(のうしゅ)を切除する手術の10日前だった。 診断では、膿腫は良性だった。しかし、開けてみて、悪性の可能性が...
カウンターだけの小さな居酒屋である。総菜を盛った大皿が、所狭しと並ぶ。男はいつも1人で端のいすに座り、ビールを飲んだ。 店は女1人で切りもりしていた。きっ...
奈良・吉野の山桜は、春も盛りになってから山を登っていく。下千本から中千本、上千本からさらに山深い奥へと。 「奥千本の西行庵に行ってみたい」と、女はねだった...
朝起きてみると、夫は亡くなっていた。「別れ際に、何か一言でも声をかけたかった」。女は心の底に、落ち着かないものを抱いていた。 夫には、「男が男にほれた」と...
「交際したい」。友だちを通じて気持ちを伝えられたのは、女が小学5年生の時だった。相手は中学1年生。それから8年間続いた初恋だった。 山陰の小さな町では、ま...