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もういちど男と女


  • もういちど男と女(15) チャット

     部屋の家具の陰から、男が姿を見せた。トレーナーのラフなスタイルだった。女は黄色のTシャツで、自分でも「若づくりかな」と思っていた。  「何をしているんですか...

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  • もういちど男と女(14) 形見 

     たばこが離せない男だった。命が尽きようとしても、吸いたがった。女は病院に見舞いに行くと、車いすに乗せて、地下駐車場に連れて行った。寒い時期だったので、女の車の...

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  • もういちど男と女(13) ストレス

     がんの治療のため、男は入院した。女が見舞いに行くと、ベッドの枕元に、ハンカチが置いてあった。真っ白で、2方の端に、細かい花あしらってあった。誰が持ってきたかは...

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  • もういちど男と女(12) 庭

     「この庭にはなにもない」。宇治・万福寺のことを、立原正秋はそう書いた。  「伽藍(がらん)と伽藍の間を、風が吹き抜けているだけらしいの。行ってみましょう」と...

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  • もういちど男と女(11) 花束 

     「すみれの花咲く頃(ころ)」。宝塚歌劇の歌が、恋の幕開けを告げた。  女は50代で夫を亡くした。「閉じこもっていたらだめ」とハイキング仲間に誘われ、週1回の...

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  • もういちど男と女(10) 寂しがり屋

     寂しがり屋だと、男は思う。3度目の結婚も、寂しさのせいだったのかもしれない。  仕事には自信があった。会社勤めの時は、営業の実績が評価された。独立してからは...

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  • もういちど男と女(09) 白無垢

     「結婚しない、と頑張ってるわけじゃないのよ」。友人にそう話したことがきかけで、女に縁談が持ち込まれた。  東京で会社勤めをしていた。ダンス、古文書、雅楽。新...

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  • もういちど男と女(08) 朝昼晩晩晩

     女の話には、どこかに父親の影が落ちていた。夫に物足りなさを感じ、妻子ある男と付き合ったのも、そのせいだったのかもしれない。  父は家族を支配した。気に入らな...

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  • もういちど男と女(07) カミーユ

     友だちは「カミーユ」と呼んだ。ロダンを愛した彫刻家、カミーユ・クローデルの作品を、展覧会で見てからだった。  その作品「分別ざかり」には、3人の男女が登場す...

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  • もういちど男と女(06) 距離感

     初恋行きのチケットを眺め、女はコンサートの日を待つ。50の大台に乗った今も心が躍る。会場に行けば、高校時代の空気を吸うことができる。  高校のころ、女は友だ...

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